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密航失敗!

 たぶん8月くらいのことだったのではないかと思います。税務署に勤務していた泉ヒロタカ兄、染川永有(そめかわえいゆう)さん、堀口の弟さん、健七と私の5名で鹿児島へ密航船を走らせました。この時の積荷は大量の黒糖でした。

 口之島までは、米軍支配エリアなので問題ありません。そこから先が日本の領土なので、越えると密航になってしまうのです。そのいけないラインを越えて鹿児島へ向かいました。錦江湾内を航行中は、警察に見つからないようにと、船倉に入ってじっとしていましたが、暑くてたまりませんでした。
「いいか、船を降りたら解散する。集合場所は山形屋(やまかたや)前だ。」
下船前にいろいろ打ち合わせをしましたが、それらはすべて無意味なものになってしまいました。なぜなら、船着場には密輸品の取り締まりの警官たちが待ち構えていたからです。沖縄で稼いだ金で買い込んだ黒砂糖の山が一瞬で消えてしまって、目の前が真っ暗になってしまいました。

 その頃の鹿児島駅近くの易居町(やすいちょう)は、闇市でにぎわっていました。そこにあった飲み屋で今後の事を密航グループの全員で話し合っていたら、40半ばの店のおかみさんが、
「私は、密航船の取り締まりの担当を知っているから、10日くらい経ってほとぼりが冷めた頃にあなた方の荷物を返してくれるように頼んであげる。しばらく、ここに泊まるといいよ。お代は、品物を換金して払ってくれればいい。」
と言ってくれました。

 お言葉に甘えて逗留するものの、いっこうに黒砂糖が戻ってくる気配がありません。密航のメンバーは、待つと決めていましたが、しびれを切らしてしまった私は、自転車屋時代の友人・薩摩屋レコードの福島さんを訪ねました。