イチローは島ん人だ!

奄美では、シマという言葉を良く使います。
狭義では、集落を指します。
それが、島であったり、県であったり、大変ワイドな広がりを見せる時もあります。

「俺たちゃ、同じシマの出身ダ」と言うと、同郷(同集落、同島、同県も含む)の事です。
そこには、TPOがあり、マリナーズのイチロー選手だって、吾(わ)きゃシマの人(ちゅ)になりうるのです。

さて、イチロー選手のお話です。
大半の人にとって、彼の所属するシアトル・マリナーズの勝敗など、どうでも良い事らしく、そのかわり、彼が打ったヒットの数に話題が集中しています。

「日本では実績を残したが、彼は、大リーグ(言いかえると世界)でも通用するのか?」
そんな不安を払拭して快進撃を続けるイチローをナゼか嬉しく思う我々は、今や国際社会とはいえ、やはり、日本人だったのです。

イチローがヒットを打ったからといって私たちのお給料は一円だって上がりゃいたしません!
なのに、彼の活躍を心から素直に喜べる自分がいとおしくさえなるのデス。
同じシマ(日本)出身者の活躍だから嬉しいのです。

同じように、高校野球を観る時、奄美の場合、最初は鹿児島県代表校の応援です。
それが敗退したら、最寄りの県の代表校に鞍替えします。
それも消えたら、九州の学校。またまた消えたら西日本勢。
だんだん地元感覚は薄れてゆきますが、それでも無理やりシマを感じていたいというこのイジラシさ!

徳之島の井之川夏目踊りが、今年の春に県指定の無形民族文化財に指定されました。
関係者の一人に、おめでとうを言ったら、「まだまだ、ゴールではないよ。国の指定になるまでやるゾ」とのことでした。

でも、彼らは、勲章が欲しいのではありません。
ヤマトで暮らしている郷土出身の人たちが、「俺たちのシマは、先人から立派な文化を受け継いできたんだぞ」という誇りを持って生きてゆける、そのようなところまで郷土芸能の地位を高めたいのだということなのです。

これは、故郷(シマ)から都会に住む同胞へ発信する、最高のエールとなることでしょう。

この、逆の場合が、米国での活躍を日本(シマ)に発信する、イチローです。
県外(よそ)の高校の野球チームだって、応援する時ゃ、国内(わきゃシマ)だし、井之川夏目踊りも、代々継がれてきた奄美(シマ)ぬ宝。
それぞれのスケールで、シマを感じさせて輝いている。

元気のキーワードは、シマだね。

<奄美島唄コラム | 不老長寿のシマ その2>